WEBという家ができた。そして、見えてきたもの。

ここしばらく、WEBサイトの制作に没頭していました。

所属する劇団820製作所の公式WEB、朗読映像を制作しているマノンラヴァンドの特設ページ、そして、自身の創作活動である「- 森ノ音 -」の作品紹介。

これまで別々の場所に存在していた活動や作品を、一つひとつ整理して、つなげていきました。

以前から、少し寂しく感じていたことがあります。

舞台を作り、朗読を収録し、映像を公開する。

そのとき、そのときで精一杯取り組んできたものの、時間が経つと、活動の記録はあちこちに散らばってしまう。

何年も続けてきたはずなのに、その歴史がちゃんと積み上がっていないような感覚がありました。

けれど今回、WEBという「家」のようなものを作ったことで、ようやく過去の作品たちが帰る場所を持てた気がしています。

誰かが作品に触れ、興味を持ってくれたときに、ほかの作品や、これまでの活動も知ってもらえる。

そんな場所ができたことは、自分にとって、とても大きな出来事でした。

作れるようになった、その先で。

WEB制作には、生成AIの力を大いに借りました。

これまでなら、構想を実現するために膨大な時間が必要だったことも、対話を重ねることで、驚くほど短い時間で形にできるようになりました。

ところが、作りたかったものが次々と実現していくうちに、ふと疑問が生まれました。

「で、自分はこれを使って、何がしたいんだろう?」

WEBはあくまでも手段であり、作品を届けるための器です。

では、自分が本当に作りたいものは何なのか。

その答えを探すように、森ノ音の過去の作品や構想を振り返ってみました。

人が、人生を取り戻す瞬間。

森ノ音には、火・風・大地・水という、四つの精霊の世界があります。

火の精霊は、自分自身が何者であったのかを忘れ、長い旅の末に記憶と使命を取り戻します。

風の精霊は、大切な姉を導くため、自らの存在を犠牲にします。

大地の精霊は、失われた世界を救うため、何年もの歳月をかけて智慧の祠を探し続けます。やがて、その泥臭い歩みそのものが祈りとなり、大地に再び息吹をもたらします。

作品ごとに物語は異なります。

けれど、並べてみると、どれも人間の生き方に通じる問いを持っているように感じました。

そして、ふと思い出したのです。

かつて、自分自身も、演劇に出会ったことで人生が大きく変わったことを。

当時の自分には、これといった夢も目標もありませんでした。

そんな自分が、一つの舞台作品に出会い、心を動かされ、演劇の道を志すようになった。

たった一つの作品との出会いが、それまで想像もしなかった人生への入口になったのです。

もしかすると、自分はずっと、あの瞬間のようなものを作りたかったのかもしれません。

人が、自分自身の人生を取り戻す瞬間。

何かに出会い、新しい視点を得て、もう一度自分の足で歩き始める。

そんな瞬間を、さまざまな角度から作品として描いていきたい。

今は、そんなふうに感じています。

これから。

もちろん、これが自分の創作活動のすべてなのかは、まだ分かりません。

これから別のものに心を動かされることもあるでしょう。

でも、これまで作ってきた作品を振り返ることで、少なくとも、自分が何に強く惹かれてきたのかを少し理解できた気がします。

不思議なことに、WEBを作ることで、作品の歴史だけでなく、自分自身の歩んできた道まで整理されていきました。

ようやく足元に、ひとつの土台ができたような感覚です。

これからは、その土台の上で、新しいものを作っていきたい。

いつか、自分がかつて演劇に出会ったときのように。

誰かが作品に触れ、何かを感じ、昨日とは少し違う景色を見ながら、日常へ帰っていく。

そんな作品が作れたらいいなと思います。