ようこそお越しくださいました。
- 森ノ音 -です。
今回は、朗読トーク!
#04ということで、
先日投稿いたしました、
宮沢賢治 著
「やまなし」
について語っていきたいと思います。
癒しのピアノと朗読『やまなし』宮沢賢治
朗読トークは、私が僭越ながら朗読させていただきました作品について、読む上で懐に秘めていたことや感想などをざっくばらんに話していくカテゴリとなっております。
やまなしは本当に数多くの考察がありますが、朗読をする上で考えてみた考察をここに残しておきたいと思います。殴り書きメモのようになってしまい、支離滅裂な箇所があるかと思いますが、お時間あれば❇︎
章立ては、
- 作中の時期が5月と12月である理由。
- クラムボン=賢治さんの親友「保阪嘉内」だった?!
- なぜ「やまなし」というタイトルになったのか。
- 妹トシの死から出版に至るまでの変更点。
- ここまでを踏まえたうえで、改めて「クラムボン」とはなにか。
- 最後に、改めて「やまなし」とはどういう話だったのか。
の、6本立てです!さすがやまなし。長くなってしまいました…!
それでは行ってみましょう!
・まずはじめに。作中の時期が5月と12月である理由。
賢治さんは、大正4年に盛岡高等農林学校に入学します。その翌年の大正5年。20歳の時に、同学生である「保阪嘉内(ほさか かない)」さんと出会います。
この方は、妹のトシさんと同じく、カムパネルラのモデルとなった方であると言われています。また、賢治さんを文学者として目覚めさせたのは、まぎれもないこの方、保坂さんなのです。
なお、保阪嘉内さんについて詳しくはwikipediaをご覧ください。
実は、やまなしを深堀するうえで、この保阪嘉内さんを外すことはできません。後述しますが、この方とのエピソードこそがやまなしの構成に大きく関わっているからです。
そして、「やまなし」は大正12年に出版されます。この保阪さんと初めて出会った"大正5年"と、出版した"大正12年"。それが5月と12月になった理由です。
なお実は、初稿は大正11年には上がっており、その際は表記が11月となっておりました。この変更を見るに、この説はとても有力であることが分かります。
・クラムボン=賢治さんの親友「保阪嘉内」だった?!
さて、保阪さんに触れたところで、やまなし永遠の謎「クラムボン」に迫ります。
ここでは、まずその語源から。
由来でしっくり来るのは、先に触れた賢治さんの親友である「保阪嘉内」さんの名前を英語にして置き換える「阪保ん→クラムボン」とする説です。
解説しますと、
「クラムclimb="阪"登る」+「ボbo=保」最後に、「ン」は、発音しやすくするための撥音便。
で、「クラムボン」。
なお、初期構想では"クラムポン"とする予定だったそうで、由来の根拠としてより際立ちます。
由来は分かったけど、結局なんなの?というお話は最後に。ひとまず次に進みましょう。
・なぜ「やまなし」というタイトルになったのか。
その由来は、保阪さんの出身地がやまなし県であるからに他なりません。
保阪さんは、ここでは詳しく触れませんが、諸事情で盛岡高等農林学校を退学処分となり、賢治さんとは離れ離れになってしまいます。
しかし、その後文通が行われ、その中でやまなしの元となるエピソードが数多く確認できます。
そうです。やまなしを構成するエピソードは、保阪さんと賢治さんのやりとりによって生まれ、
また、この学校を通しての出来事こそがやまなしの元となったのです。
そう考えると、保阪さんとの話である以上、タイトルを出身地「やまなし」とする解釈はかなり有力になります。
ちなみに、こちらのブログ様が年表で深く追ってくださっていますので、詳しく知りたい方はのぞいてみてください!
ここまでで、保阪さんがいかにやまなしを語るうえで欠かせない存在であるのかが分かってきたかと思います。
まとめますと、
・タイトル「やまなし」は保阪さんの出身地"やまなし県"。
・永遠の謎「クラムボン」の語源は、「阪保ん」。
・作中の月の数字は、保阪さんと出会った"大正5年"と、やまなしを出版した"大正12年"。
続きまして、初稿ができた大正11年。こちらも考察に欠かせない出来事が起こります。
・妹トシの死から出版に至るまでの変更点。
さて、大正11年11月。そうです、賢治さんの妹トシさんが亡くなります。
この出来事がきっかけなのか判断する術はありませんが、やまなしは深い命の物語へと変貌を遂げていきます。
初稿には、蟹の子供らが「暖かいねえ」などと話すエピソードがありましたが、ごっそりなくなり、
「クラムボンは死んだよ」といった、命が奪われていく様。死がより際立つ構成へと変更が加えられています。
また、初期型のラストは「波はいよいよ青白い焔をゆらゆらとあげました。」で終わっていますが、
出版された際は「それは又金剛石の粉をはいているようでした。私の幻燈は~」の文が付け加えられています。
なぜこのような文章が追加されたのでしょうか。多々考えられますが、一つは賢治さんの有名な言葉
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」が、重要な手がかりになってくると感じています。
これについては最後に触れます。続きます!
なお、初期型はこちらで掲載してくださっています!
・ここまでを踏まえたうえで、改めて「クラムボン」とはなにか。
ここまで語源・由来には触れてきましたが、
物語の存在としての「クラムボン」はいったい何なのかを考えてみます。
現在、最も有力とされる説が、「小生物・プランクトン説」のようです。
確かに、魚が口を開けて食べるものは小生物。プランクトンはあながち間違いではなさそうです。
しかし、そもそもプランクトンは跳ねて笑うのでしょうか…ちょっと疑問が残ります。
ー作家の言葉は自身の内から発せられるもの…。
これまで触れてきた考察と有力な説を含めて考えると、
クラムボンには「親友・妹・小生物」の3要素が含まれていると考えられます。
全てに共通するものは何でしょうか…。「生」であると自分は考えます。
ここで賢治さんの有名な作品、「よだかの星」と「春と修羅・序」に触れたいと思います。
・よだかは最後、「リンの火のような"青い美しい光"となって」静かに燃えているのを見ます。
・序では、「わたくしという現象は一つの"青い照明"」とあります。
この二作品に登場する"青い光"ですが、賢治作品において、青い光とは「生」を意味するとの解釈が多いようです。
そして、実はやまなしにも、ラストで二回「波はいよいよ"青白い炎"をよらゆらとあげました」と、"青い炎"が登場します。
以上のことから、「青い炎=生」と考えてみると、「クラムボン=青い炎」の式が成り立ちます。
まとめますと、
・基本モデル:親友の保阪さん
・追加精神面:妹のトシさん
・形・表面上:小生物・プランクトン
・子供たちが見ているもの:青い炎
…と、読めるかと思います。
よって、ここでは、「クラムボン=青い炎」と考察したいと思います。
蟹の子供らは、小生物の肉体を通して、「青い炎」を見ていたと考えてみると面白くなってきます。
…また、ここで余談ですが、こちらも永遠の謎「イサド」は東京を示しているとされています。
「イ・サ・ド」を「イ・ド・サ」と並べ替えてみます。
「イド=江戸」「サ=さ」「江戸さ連れて行かんぞ→東京さ連れて行かんぞ」
賢治さんは、当時盛んに東京を目指しており、そのエピソードは沢山出てきます。
蟹の子供たちが訪れることを楽しみにしている場所と考えると、かなり有力な説であると感じます。
・最後に、改めて「やまなし」とはどういう話だったのか。
〇最初の5月。
蟹の子供らは、水の底でプランクトンを通して青い炎を見ています。
その揺らぎ、そこに宿る想いや生を感じ、様々な思いを巡らせます。
その後、プランクトンがお魚に食べられて、そのお魚が今度はカワセミに食べられる。"食物連鎖=自己犠牲"が描かれます。
子供たちは、まだ一体何が起こっているのか分からず、この事態をただ「悪いことをしている」と捉えます。
しかし、そのプランクトン=クラムボンは自己犠牲の精神を果たした後に戻ってきます。
すると、にわかにぱっと明るくなり、"日光の黄金は、夢のように水の中に降って"きます。
〇次に12月。
子供らの蟹はよほど大きくなりました。
そこへ"やまなし"が降ってきます。
木の枝に引っかかり、朽ちるのを待つやまなしの上には、"月光のにじがもかもか集まり"ます。
やまなしはその後腐敗し、おいしいお酒となって蟹たちの糧となり、種は新たな生命を生み出してゆきます。
→"自己犠牲の精神"を生きたとき、
5月のクラムボンでは日光が降り注ぎ、12月のやまなしでは月光の虹がもかもか集まります。
まるで「よだかの星」に登場するよだか、そして、「銀河鉄道の夜」のサソリの火のようです。
〇そしてエピローグ。
波は青白い炎をゆらゆらと上げます。
その"青い炎=クラムボン"は、「金剛石の粉を吐いている」かの如く無数に存在し、水底に満ちている…。
→ここで、トシの死後書き加えられた一文、「金剛石の粉」が登場し、
先に挙げた賢治さんの言葉「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」に繋がります。
このように考察すると、この物語は「ほんとうのさいわい」の話であることが立ち現れてきます…!
…なお、この内容は私の主観が混じっているということをご留意ください。
いやはや、長かったですね…!!ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
作品に興味を持っていただけましたら、ぜひ本文を!読むのが大変だという方は、- 森ノ音 - の朗読版をぜひ聞いてみてくださいませ!
森ノ音 朗読 →→→ 癒しのピアノと朗読『やまなし』宮沢賢治 著
それでは今回はこの辺で!また次の機会にお会いしましょう❇︎
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